
慢性気道炎症
気管支拡張症患者の気道には、好中球、好酸球、マクロファージ、リンパ球などの炎症細胞が広範囲に浸潤しており1,9)、なかでも好中球が主要な炎症細胞として作用します。
好中球を介した慢性気道炎症は気管支拡張症の重症度を反映しており、疾患の進行に寄与する可能性があると考えられています4)。
気管支拡張症は、好中球性炎症を主体とする慢性気道炎症、慢性気道感染症、粘液線毛クリアランスの異常、肺の破壊の4つの要因が相互に関連して悪化を招くと考えられています1,2)。特に、好中球性炎症は気管支拡張症の発症および疾患進行に重要な役割を果たしていると考えられます3,4)。
気管支拡張症に至る基礎原因は多岐にわたり、患者の約40%は原因が特定できない特発性疾患です5,6)。
気管支拡張症患者では肺炎の既往、肺NTM症、胃食道逆流症(GERD)、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などを高頻度でみとめます7)。複数の併存疾患を合併する場合は、死亡リスクが高まる可能性があるといわれています8)。
Pathophysiology
気管支拡張症の4つの要因とVicious Vortex
気管支拡張症は、 持続的な気管支拡張をきたす疾患です9)。
好中球性炎症を主体とする慢性気道炎症、慢性気道感染症、粘液線毛クリアランスの異常、肺の破壊の4つの要因が相互に関連し悪化を招く、vicious vortexという概念が提唱されています(図1)1,2)。
図1:気管支拡張症の病態:vicious vortexを形成する4つの要因
慢性気道炎症
気管支拡張症患者の気道には、好中球、好酸球、マクロファージ、リンパ球などの炎症細胞が広範囲に浸潤しており1,9)、なかでも好中球が主要な炎症細胞として作用します。
好中球を介した慢性気道炎症は気管支拡張症の重症度を反映しており、疾患の進行に寄与する可能性があると考えられています4)。
慢性気道感染症
細菌、真菌、ウイルスによる慢性気道感染症は気管支拡張症の発症と増悪に関連します10,11)。
気管支拡張症患者から高頻度に分離される病原体は、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、非結核性抗酸菌(NTM)、アスペルギルスなどです7)。
肺の破壊
気管支における感染や持続的炎症などにより、気管支の構造保持組織である弾性線維、平滑筋、軟骨などが破壊され、肺損傷をもたらします9,10,13,14)。
粘液線毛
クリアランスの異常
粘液線毛クリアランスの異常により、気道内に喀痰が滞留して細菌が捕捉され、感染巣が形成されます1,12)。これに対して宿主の免疫応答が過剰に働き、気管上皮に持続性の炎症が起こります13)。
Flume PA, et al. Lancet. 2018; 392(10150): 880-890.より作成
気管支拡張症の発症と進行における炎症の役割
気管支拡張症において高頻度で炎症性の基礎疾患が存在すること、嚢胞性線維症などの粘液閉塞性疾患の発症に炎症が重要な役割を担っていることから、炎症が本疾患の発症における開始イベントである可能性が示唆されています15)。
最初の傷害が炎症反応を引き起こし、その調節不全と継続的な炎症刺激によって炎症が持続する、という病態モデルが提唱されています(図2)15)。
炎症反応は粘液の過剰分泌と粘液による気道閉塞を誘発し、肺の損傷と拡張を引き起こします。この病態モデルでは、慢性的な感染は炎症による病態形成が十分に確立された後に生じる事象と考えられています(図2)15)。
図2:炎症の役割
Reprinted from The Lancet Respiratory Medicine, 12. 11, Long MB, et al, Rethinking bronchiectasis as an inflammatory disease, 901-914., Copyright(2024), with permission from Elsevier.
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